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2021年2月14日 責任のなすり合いが起きる理由

会社の部署間で責任のなすり合い、
「それは営業の仕事だろう、そのクレームは現場の責任だ、経理が、社長が・・・」
このようなやり取りはございませんか?

今、読んでおります「街場の教育論」(内田樹著、ミシマ社)に
そのヒントとなりそうなことが書いてありましたので
紹介させて頂きたいと思います。

作家であり、神戸女学院大学文学部教授の著者は、
「社会に対応できない若者が増えた原因の一つは、
大学で教養課程を廃止したため」と言っています。

現役大学教授がこれに言及しているところに
とても説得力があるのを感じます。

1990年までの大学には「教養課程」という、
全学生が机を並べて同じ事を学ぶ期間が2年間あり、
そこでは様々な価値観の学生がコミュニケーションを取っていた。

そして3年生になって各人が「専門課程」を選択し、
自分が進みたい分野を学ぶ。

そうやって社会に出た学生は、
自身の専門分野で解決できないことが起きたときに
大学の教養課程で培った人脈やコミュニケーション方法で
他人とコラボしあって解決を図る能力を持っていた。

しかし当時の財界や産業界が、
「高レベルの専門家を輩出するために教養課程を廃止すべき」と訴え、
教養課程が無くなり、専門課程のみとなった。

専門課程に特化したことで高レベルの専門家が輩出された。
しかし社会で他部門とコラボしなければならなくなったときに
専門家たちはそれが出来なかった。

「私は出来ないので、出来る人の力を借りて一緒に解決していきましょう」
というコミュニケーション術が身についていなかったため。

もしくは
「私はスペシャリストだ。他人に頭を下げるなんて・・」

または
「これは私の分野じゃないから関係ない・・」

「コミュニケーション能力を育てる教養課程の廃止は間違であった」
と気づいた国は、教養課程を復活させた。

著者は「本当に使える専門家」とは、
1.自分が出来ることと出来ないことを理解している人
2.他人の専門性を尊重できる人
3.他者とのコラボができる人
だそうです。

専門教育だけをしていると
使えない専門家が出来上がってしまう・・・。

「これは中小企業の組織作りと同じだなあ」と、
思いました。

大企業と違って中小企業は、
入社後半年間は集合研修をして・・・などはなく、
すぐに自分の職場に配属されます。
複数の部署をこなす等も基本的にはありませんね。

早く仕事を覚えて生産性の高い社員
になってほしいからですね。

だから製造、営業、経理など、
一度就いた部署が変わることはありません。

製造部では製造の専門家となり、
営業部では営業の専門家となり、
経理部では経理の専門家となり、
生産性が向上する。

ここまでは会社の期待通りです。

しかし部門をまたぐ問題が発生したときに
部門を超えて一緒に解決するスキルがない。

というよりもそんなスキルは学んでいません。
他部署とコミュニケーションを取る機会もない。

「今の会社があるのは自分以外の部署のおかげだ」
ということすら学ぶ機会も共有する機会もない。

「それは営業の仕事だろう、そのクレームは現場の責任だ、経理が、社長が・・・」
こうなって当たり前ではないでしょうか?

では小企業が出来る対策はと言いますと、
例えば「定期的に全員で会議をする」。

最初の頃は責任のなすり合いで
会議にもならないかもしれません。

しかしその都度座長が会議の目的を共有し、
どうやったら皆でクリアできるかを話し合う。

会議ルールの全員唱和なども良いかもしれませんね。
1.相手の意見は絶対に否定しません
2.したがって発言者は建設的意見を述べます
3.「ウチの部署は」という発言は禁止とします
などなど。

そうやってぶつかり合いながら
製造部の努力を営業部と共有し、
営業部の努力を製造部と共有し、
経理の努力、社長の努力を皆で共有する。

他者とのコミュニケーション術、コラボ術を身に着ける。

今これにチャレンジしている会社があります。
少しずつではありますが、
社員が変わりつつあります。